しゃくれ（下顎前突）の一番良い治し方はどれ？矯正医が解説します。

2025.07.17 2025.10.02

監修・執筆：スマイルアクセス矯正歯科院長

吉住淳

(日本矯正歯科学会認定医／インビザライン公式スピーカー/著書に『素顔の自分をアップデートする、オンライン歯列矯正』) 東京・渋谷と吉祥寺で診療を行い、通院回数を最小限に抑えたオンライン矯正治療にも対応。海外在住の方を含む、遠方からの相談・治療実績も多数あります。 ▶︎ 公式YouTubeはこちら

こんにちは。スマイルアクセス矯正歯科の院長、吉住淳です。

「自分の横顔、なんだか“しゃくれて”見える気がする…」そんな違和感から、当院にご相談に来られる方がたくさんいらっしゃいます。

“しゃくれ”という言葉は見た目の印象を表すものですが、
実はその多くが歯並びや骨格、噛み合わせに関わる問題と結びついているんです。

しゃくれのように見える横顔も、噛み合わせや骨格の調整によって改善できるケースがあります。

この記事では、しゃくれの原因や治療法について矯正歯科医の視点からわかりやすく解説していきます。

しゃくれについて──見た目の悩みと、知られざる“かみ合わせ”の関係

“しゃくれ”は、一般的には下あご（あご先）が前に出て見える顔立ちを指す言葉です。

見た目の印象に直結するため、写真や鏡を見るたびに気になってしまうこともありますよね。

実はこの“しゃくれ”は「歯の噛み合わせ」と関係していることがあります。

歯科の世界では、下の歯が上の歯より前に出ている状態を「受け口」と呼び、
これがしゃくれに見える一因になっていることも少なくありません。

整理すると

・しゃくれ：あご先が出て見える“顔の印象”に関する悩み
・受け口：上下の歯のかみ合わせが逆になっている“噛み合わせのズレ”

つまり、見た目が気になっていたとしても、その背景には歯や骨格の位置関係が隠れている場合があるのです。

しゃくれの原因｜3つのタイプに分かれます

しゃくれに見える顔立ちには、大きく分けて3タイプがあります。

ご自身の状態がどのタイプかを知ることで、必要な治療や対応の方向性が見えてきます。

① 歯列型（歯の位置によるしゃくれ）

歯そのものが原因で「しゃくれて見える」タイプです。

・下の前歯が外に傾いている
・上の前歯が内側に倒れている
といった状態が、口元の印象を前方に押し出してしまいます。

このタイプは、歯列矯正で比較的スムーズに改善が可能です。

マウスピース矯正でも対応できるケースが多く、実際に当院でも多くの患者さんが見た目の改善を実感されています。

② 骨格型（下あごの骨そのものが前に出ている）

骨格の成長によって下あごの骨が前方に大きく伸びているタイプです。

遺伝的な要素が関わることもあり、骨格性の下顎前突と診断されることが多いです。

この場合、程度によっては矯正治療のみで対応可能ですが、骨のズレが大きい場合は外科手術が必要になることもあります。

③ 習癖型｜噛み方や舌のクセなど、日常習慣によるもの

特に成長期のお子さんに多く見られるタイプです。

・舌の位置
・噛みグセ
・下あごを前に出す癖

など、日常の使い方によって徐々に下あごが前方に出てしまうケースです。

こうしたタイプは、早期のアプローチで比較的改善しやすい傾向があります。

小学生〜中学生の間に一度矯正医にご相談いただくと、成長を利用した矯正治療が可能になります。

しゃくれ治療の選択肢。手術なしでも整う？

①矯正治療で整うケース

「しゃくれ＝外科手術」と思われがちですが、
歯列矯正や補助装置の活用によって、手術を回避できるケースもあります。

とくに以下の3パターンでは、歯列矯正のみで見た目や機能の改善が期待できる場合があります。

・歯並びのズレが中心である

上下の歯の位置関係によるしゃくれは、マウスピース矯正やワイヤー矯正による歯の移動でバランスを整えることが可能です。

たとえば、

・上の前歯をやや前に出す（前方移動）
・下の前歯を内側へ傾ける（内転）
といった設計により、「横顔の印象」が大きく変わることもあります。

・骨格的ズレが軽〜中等度

骨格に多少の前後差があっても、歯並びを補正することで目立ちにくくする“カモフラージュ治療”が有効です。

カモフラージュ治療とは本来であれば外科手術が適応となるような骨格のズレに対し、歯の位置を調整することで見た目や噛み合わせを補正する治療方法です。
あくまで骨格そのものを変えるのではなく、歯列の工夫によってズレを“カモフラージュ”するアプローチとなります。

たとえば
・下の前歯を内側に引っ込める
・上の前歯を前方へ出す

といった歯の動かし方で、下あごの突出感を緩和し、横顔の印象まで整えることが可能になります。

このとき、アンカースクリューなどの補助装置も活用することで、より精密で計画的な歯の移動が可能となります。

アンカースクリューとは？

歯ぐきに一時的に埋め込む小さなチタン製のネジで、歯を動かす際の“固定源”として使用します。

これにより、前歯と奥歯を別々にコントロールでき、外科手術を避けながら、見た目や噛み合わせのバランスを整える治療設計が可能になります。

・Eラインなど見た目の改善が主目的

「噛み合わせに問題はないけれど、見た目が気になる」──
そのような場合でも、手術を行わずに矯正治療で審美的な改善を目指すことは十分に可能です。

たとえば、
・Eライン（横顔の美しさ）を整えたい
・口元の突出感を軽減したい

といったご希望に対しては、歯の傾きの補正や唇の位置の変化につながる歯の移動など、非外科的な
アプローチでも変化を実感される方が多くいらっしゃいます。

②外科手術が必要なケース

下あごの骨自体が大きく、前方に成長しすぎている場合は、矯正治療だけでは根本的な改善が難しいことがあります。

このようなケースでは、あごの骨を外科的に動かす手術（骨切り術）が必要となります。

代表的な方法には、

・下顎枝矢状分割術（SSRO）
・下顎骨切り術（セットバック手術）

などがあり、下あごの骨を一部切って後方に下げ、再固定することで顎の突出を改善します。

また、万が一、上あごが後退していたりズレている場合は、それに加えて上あごの手術「上顎骨切り術（Le Fort Ⅰ型）」を併用する場合もあります。

手術は全身麻酔で行われ、入院期間は1〜2週間程度です。

術後は一時的な腫れや顎の固定などダウンタイムがありますが、輪郭そのものが大きく変化する可能性もあります。

なお、手術は口の中からアプローチするため、顔に目立つ傷が残る心配はほとんどありません。

一般的には、

①術前矯正
↓
②顎の外科手術
↓
③術後矯正

という流れで治療を進めていき、トータルで1年半〜3年ほどかかるのが一般的です。

【症例で見る】しゃくれは矯正でここまで変わる

しゃくれや下あごの突出感に悩んでいても、
「本当に矯正だけで整うの？」
「手術が必要では？」
と不安に思う方は多いかもしれません。

下あごの前突感（いわゆる“しゃくれ”）は、手術をせずに矯正治療だけで改善できるケースも少なくありません。

ここでは、スマイルアクセス矯正で実際に行った非外科的アプローチによる症例を、治療法ごとにご紹介します。

マウスピース矯正、ワイヤー矯正、そしてその両方を組み合わせた“コンビネーション治療”。
見た目も機能も改善された横顔の変化を、ぜひご自身の参考にしてみてください。

マウスピース矯正による治療症例

30代女性｜しゃくれ（骨格性下顎前突）と叢生を抜歯・インビザラインで治療（4年7か月・820,800円）

前歯のガタつきと噛み合わせを気にされてご相談いただきました。

前方に出た下顎と叢生が重なった骨格性の下顎前突で、治療の精密さが求められる症例でした。抜歯でスペースを確保し、インビザラインで上下の位置関係や歯列全体をじっくり整えていきました。

4年7か月と時間をかけた分、噛み合わせが安定し、口元の緊張も和らいだ印象に。骨格に課題がある場合でも、計画的な設計で自然な仕上がりが目指せます。

50代男性｜しゃくれ（機能性反対咬合）と叢生を非抜歯・インビザラインで治療（1年9か月・836,000円）

「歯並びのズレが気になる」と来院された50代の男性患者さんです。噛み癖などの影響で機能性の受け口となっており、骨格のズレは軽度。

抜歯は避け、マウスピース矯正（インビザライン）で上下の前歯のバランスを整える設計にしました。

治療後は噛み合わせだけでなく、フェイスラインも引き締まり、全体的に若々しい印象になりました。

年齢を問わず、矯正による見た目と機能の改善が可能であることを示す症例です。

20代女性｜しゃくれ（骨格性下顎前突・非対称）を抜歯・インビザラインで治療（3年6か月・864,000円）

「顎の左右差としゃくれが気になる」と来院された20代の女性です。左右非対称を伴う骨格性下顎前突で、抜歯を選択しスペースを確保しました。

歯列の左右差を補正しながら、前歯の位置関係を調整。マウスピース矯正（インビザライン）の特性を活かして、精密にフェイスラインを整えました。

下顎の突出感と顔のバランスが整い、笑顔にも自信がもてるようになったとのお声をいただきました。

ワイヤー矯正による治療症例

30代女性｜しゃくれ（下顎前突）を抜歯・ワイヤー矯正で治療（2年5か月・842,400円）

「横顔のラインが気になる」と受診された方で、骨格性の受け口がありました。

抜歯を行い、ワイヤー矯正で歯列全体をコントロールすることで、噛み合わせと横顔の印象を同時に改善しました。

ワイヤー矯正の強みを活かして、前歯の位置と傾きを細かく調整。

骨格的なズレを感じさせにくい、自然な口元へと導くことができました。

コンビネーション矯正で改善した受け口の症例

30代女性｜受け口（骨格性下顎前突）を非抜歯・ワイヤー＋インビザラインで治療（2年10か月・820,800円）

「しゃくれ感が気になる」とご相談。骨格性の下顎前突でしたが、抜歯は行わず、ワイヤー矯正とマウスピース矯正の組み合わせで治療しました。

ワイヤーで奥歯の位置をコントロールした後、マウスピースで前歯の細かな位置調整を行う“コンビネーション矯正”により、突出感をしっかり緩和。

フェイスラインや口元のバランスも整い、外科手術を回避したい方にも参考になる症例です。

＼口元の変化を写真で見る／

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よくあるご質問：しゃくれ・下あごの前突は矯正で治せる？

「しゃくれかも…」と気になっても、治療の内容や流れが分からず、不安な気持ちを抱えている方も多いのではないでしょうか。

ここでは、実際に患者さんからよくいただくご質問に、矯正医の立場からお答えします。

Q1. 大人になってからでも、しゃくれは治せますか？

A. はい、成人の方でも矯正治療は可能です。
下あごの成長が止まっている大人の場合は、「矯正だけで整えられるか」「手術を併用すべきか」をしっかり見極めることが大切です。
歯並びや軽度のズレが中心なら、矯正治療のみで改善できることも少なくありません。

実際に当院にも、30代・40代・50代からご相談に来られ、治療をスタートされる方が多数いらっしゃいます。
「今からでも遅くないかな…？」と不安に思われた方も、まずは気軽にご相談ください。

Q2. 手術が必要な場合と、矯正だけで治る場合はどう見分けるの？

A. 顔や顎のバランス、噛み合わせの状態などを専門的に分析して判断します。
矯正歯科では「セファロ」という横顔のレントゲンを撮影し、上下の顎骨の位置関係やズレの度合いを数値で評価します。

・ズレが小さい：矯正だけで対応できる可能性あり
・ズレが大きい：外科手術を併用した方が良いケースも

とはいえ、最終的な判断は「どの程度の見た目改善を目指すか」や「機能面で困っているか」によっても変わります。
一人ひとりに合わせた診断を行いますので、まずは矯正医にご相談いただけたらと思います。

Q3. 顎の手術って、やっぱり大変ですか？

A. 不安なお気持ちはもっともです。でも、きちんと準備すれば、安心して受けられる治療です。

顎の骨切り手術は全身麻酔で行うため、手術中の痛みはありません。

術後は腫れやしびれが出ることもありますが、多くは数週間で落ち着きます。
入院は施設にもよりますが、最近は3〜5日で退院される方も増えています。

「怖いな」と感じるのは当然です。だからこそ、納得いくまでよく話をして決めることが大切です。

なお、スマイルアクセスでは外科手術は行っていませんが、外科手術が必要と診断される場合は信頼できる専門医療機関と連携し、サポートしています。

Q4. 矯正装置が目立つのが心配です…

A. 目立ちにくい装置もたくさんありますので、ご安心ください。

たとえば
・透明で取り外し可能なマウスピース矯正（インビザラインなど）
・目立たないホワイトワイヤーによるワイヤー矯正
など目立たない矯正装置もあります。

「仕事上、目立つ装置は避けたい」などのご希望は矯正医に遠慮なく伝えることをおすすめします。

Q5. 治療にはどれくらいの期間と費用がかかりますか？

A. 症状や治療方法によって異なりますが、一般的な治療費用の相場目安をご案内します。

・矯正のみの場合：期間は1年半〜3年ほど、費用は80万〜120万円前後
・手術を併用する場合：保険が適用され、自己負担は数十万円程度

参考までに以下で当院の料金をお伝えさせていただきます。

▶ 当院のワイヤー矯正・料金（税込）

スマイルアクセス矯正では、白いワイヤーや透明のブラケットなど目立ちにくい装置もご用意しています。
「目立たないなら始めやすい」と、見た目を気にされていた方にも好評です。

	費用（税込）
全体矯正（メタルブラケット）	¥880,000
全体矯正（クリアブラケット）	¥935,000

▶ 当院のマウスピース矯正・料金（税込）

	費用（税込）
インビザライン	¥935,000

分割払いやデンタルローンにも対応していますので、費用面のご不安もお気軽にご相談ください。

※すべて調整料込みのトータルフィーです　
※精密検査後に適切な治療プランをご提案いたします。

Q6. 子どものしゃくれは自然に治ることもありますか？

A. 自然に治ることもありますが、早めに相談いただくのが安心です。
成長期は顎の成長をコントロールできるため、早期に治療を始めれば非抜歯で済む、装置が軽くて済むなどのメリットもあります。

「様子を見ていたら下あごだけ成長してしまった」というケースも多いため、
小学生のうちに一度、矯正医の診察を受けることをおすすめします。

Q7. 相談だけでも受けられますか？治療を強くすすめられたりしませんか？

A. ご安心ください。相談だけでも大歓迎です。
スマイルアクセス矯正では、無料カウンセリングを実施しています。「気にはなっているけれど、治療するかどうかはまだ決めていない」そんな方も多くご来院されています。

もちろん、無理に治療をおすすめすることはありません。矯正医が歯並びを丁寧にチェックしたうえで、現状の問題点や、考えられる治療法について分かりやすくご説明します。「まずは話だけ聞いてみたい」そんな気持ちでも、どうぞ安心してお越しください。