こんにちは。スマイルアクセス矯正歯科の院長、吉住 淳です。
「歯並びの見た目は悪くないけど、なんとなく噛みにくい」
そんな違和感を訴える方が、近年では少しずつ増えてきた印象があります。
実は、歯並びが整って見えていても、噛み合わせ(咬合)に問題を抱えているケースは少なくありません。
「なんとなく噛みにくい」
「片側ばかりで噛んでいる」
そんなちょっとした違和感こそが、 お口全体のバランスが崩れているサインかもしれません。
本記事では、「正しい噛み合わせ」とは何かを、矯正医の視点からわかりやすく解説します。
そもそも良い噛み合わせとは?矯正医が使う5つの判断基準
まずお伝えしたいのが、矯正の診断では
「歯並び」と「噛み合わせ」は別のものとして考える
ということ。
見た目が整っていても、しっかり噛めていなければ「良い状態」とは言えません。
私たち矯正医が「これは良い噛み合わせですね」と判断する条件は、大きく分けて次の5つです。
①歯列の形がU字型で整っている
理想的な歯列は、上から見たときにきれいなU字型のカーブを描いています。
このカーブに沿って、すべての歯が隣の歯と隙間なくピタッと接している状態が、正しい歯並びの基本です。
この整ったアーチは、見た目の美しさはもちろん、舌や唇の動き、発音のしやすさにも大きく関わります。
歯がデコボコしていると、食べ物が詰まりやすく、歯磨きも難しくなり、虫歯や歯周病のリスクも高まります。
②上下の前歯の中心(正中線)が合っている
上の前歯の真ん中と、下の前歯の真ん中、
この「上下の正中線」がぴったりと揃っているかどうかも、噛み合わせの重要な指標です。
もしこの中心がずれていると、左右のバランスが崩れ、顔のゆがみや顎関節への負担にもつながることがあります。
また、見た目にも微妙な「非対称感」が出てしまい、笑ったときの印象にも影響します。
③前歯のかみ合わせが適切(2〜3mmの前後・重なり)
良い噛み合わせでは、上の前歯が下の前歯より2mm程前に出て、重なるようにかみ合っています。
このわずかな重なりがとても重要で、
・食べ物をしっかり噛み切れる
・発音が明瞭になる
・口元が自然で美しく見える
といった、審美・機能の両面で理想的な状態につながります。
一方で、前歯が当たらない「開咬(かいこう)」や、当たりすぎる「過蓋咬合(かがいこうごう)」などは、食事や発音に支障をきたします。
奥歯が「山と谷」のように互い違いにかみ合っている(第一大臼歯の噛み合わせ)

噛み合わせの中でも特に重要なのが、奥歯。
中でも上の図の青丸で囲った「第一大臼歯(6番目の歯)」の噛み合わせが重要です。
理想的な状態では、上の奥歯の「山(咬頭)」が、下の奥歯の「谷(溝)」にぴったりと入り込むような構造になっています。
これを「互い違いの噛み合わせ」と呼び、上下の歯がジグザグにかみ合うことで、
- 噛み合わせの安定性が高まる
- 左右均等に力がかかる
- 咀嚼の効率が良くなる
といった多くのメリットがあります。

特にこの第一大臼歯は咬合の“鍵”となる歯とも言われ、ここが正しくかみ合っていないと、前後左右の歯のバランスがすべて崩れてしまいます。
もしこの奥歯がズレていると、前歯でうまく物を噛み切れなかったり、片方だけで噛むクセがつきやすいです。
そして歯や顎関節に過剰な負担がかかってしまうのです。
噛む力が1本の歯に集中せず、2本で支え合っている(力の分散)
私たちが食事のときに使う「噛む力(=咬合力)」は、実は想像以上に強いです。
男性で約70〜80kg、女性でも50kg前後の力が歯にかかると言われています。
この力がもし1本の歯だけに集中してしまったら、
その歯や支える骨、歯ぐき、さらには顎の関節にも大きな負担がかかってしまいます。
そこで、理想的なのは、1本の歯に対して上下で2本の歯が支え合う形。
ちょうど、上下の歯が互い違いにかみ合いながら、全体で支え合っている状態です。
このようにして「噛む力=咬合力」をうまく分散できていると、
- 歯への負担が少なくなる
- 歯ぐきや顎の骨も守られる
- 将来的な歯の寿命も延びる
といった大きなメリットにつながります。
これらすべてが揃ってはじめて、
「噛む」「発音する」「歯を守る」
といったお口の機能がしっかり果たせるのです。
一方で「悪い噛み合わせ」だと、ガタガタや出っ歯・受け口といった“見た目の問題”だけですみません。
「片側だけで噛んでしまう」「顎関節に痛みが出る」といった“機能面のリスク”も含まれます。
矯正医が解説|悪い噛み合わせの6タイプとBefore/After写真でわかる治療改善例
理想的な噛み合わせがある一方で、「正しく噛めていない状態」は、
矯正の現場では「不正咬合(ふせいこうごう)」と呼ばれます。
歯が並んでいても、噛み合わせに問題があると
「噛みにくい」「疲れる」「虫歯になりやすい」など、さまざまな不調の原因になります。
ここでは、矯正現場でよく見られる代表的な不正咬合を6タイプに分けてご紹介します。
それぞれの特徴とリスク、そして実際の治療症例(Before/After)もあわせて解説します。
① 出っ歯(上顎前突)|前歯が前に出すぎて、かみ合わない
出っ歯は、見た目の問題だけではありません。
前歯がしっかりかみ合っていないことが多い状態です。
前歯がかみ合っていないと、噛みちぎる・発音するなど、歯本来の役割が果たせないだけでなく、奥歯に負担が集中してしまい、将来的なトラブルにもつながります。
20代女性|出っ歯、口元の突出感を抜歯+ワイヤー矯正で改善(2年5か月・842,400円)
前歯の出っ張りと口元の突出感を気にされてご相談いただきました。
前歯の前方傾斜が強く歯槽性の上下顎前突で、治療の途中で挙式もあったためブライダルに向けての治療も行いました。抜歯でスペースを確保し、ワイヤー装置で前歯の傾きをコントロールしながら、歯列全体を整えました。
2年5か月の治療で噛み合わせと口元が自然に調和し、表情全体が柔らかく見えるようになっています。
② 受け口(下顎前突)|前歯の逆かみ合わせで機能不全に
受け口は、上下の前歯のかみ合わせが“逆”になっている状態です。
通常、上の前歯が2〜3mm前に出て、下の前歯にかぶさるように噛むのが理想ですが、受け口ではこれが逆転しています。
この状態だと、奥歯もずれた位置で噛むことになり、噛む力が正しく伝わらない、顎関節に負担がかかるなど、長期的に影響が出やすくなります。
30代男性|骨格性の受け口・叢生を非抜歯+インビザラインで改善(1年10か月・880,000円)
噛み合わせのずれと歯並びのガタつきを気にされて来院されました。
叢生を伴う骨格性の下顎前突に加え、下顎の左右差も見られる複雑な症例でしたが、非抜歯での対応を計画。インビザラインで歯の傾きと位置を精密にコントロールし、1年10か月で噛み合わせと歯列のバランスが整いました。
骨格的な課題があっても、丁寧な診断と設計によって、見た目と機能の両面で自然な改善が可能です。
③ 開咬(かいこう)|前歯がかみ合わず、常に“すき間”がある
開咬は、奥歯でしっかり噛んでも前歯が空いたまま、かみ合っていない状態です。
「前歯で麺が切れない」「サンドイッチがかみちぎれない」といったお悩みが多いですね。
このように前歯が機能していないと、奥歯への負担が過剰になり、歯や骨にかかるストレスが大きくなってしまいます。
20代女性|骨格性の開咬を抜歯+インビザラインで改善(1年5か月・825,000円)
奥歯でしか噛めず、前歯が閉じないことを気にされて来院されました。
骨格性の開咬に加え、先天欠如歯も確認され、噛み合わせと見た目の両面で難易度の高い症例でした。抜歯によりスペースを整え、インビザラインで咬合の高さと前歯の接触関係を丁寧に構築。
歯の本数が限られる中でも1年5か月かけて機能性と審美性を回復しました。咬める喜びと自然な笑顔が、患者さんの表情にしっかり表れていたのが印象的でした。
④ 過蓋咬合(かがいこうごう)|噛み込みが深すぎて前歯が隠れる
一見キレイな歯並びに見えることも多いですが、下の前歯が見えないほど深く噛み込んでいる状態が過蓋咬合です。
前歯が深くかぶさっていると、下の歯や歯ぐきを傷つけたり、あごの動きが制限されやすくなるため、将来的に不快感や関節症のリスクを高める要因になります。
30代男性|過蓋咬合・叢生を非抜歯+インビザラインで改善(1年・783,750円)
噛み合わせの深さと歯並びのデコボコ感を気にされて来院されました。
診断では、叢生を伴う過蓋咬合と判断。咬合の深さを改善しながら歯列の並びを整えるため、非抜歯でのマウスピース矯正を選択しました。前歯の被蓋を浅くすることで、顎の動きや発音のしやすさも向上。
1年という短期間で、見た目の印象と機能のバランスが取れた咬合へと導くことができました。深いかみ合わせでも丁寧な設計でマウスピースでもしっかりと治せます。
⑤ 空隙歯列(くうげきしれつ)|歯と歯の間にすき間があいている
空隙歯列は、歯と歯の間にすき間がある状態で、いわゆる“すきっ歯”と呼ばれることもあります。
噛み合わせの面から見ると、歯どうしがうまく接触していないために咬合力が正しく伝わらず、咀嚼効率が低下したり、特定の歯に負担がかかったりする原因になります。
また、食べ物が詰まりやすく、虫歯や歯周病のリスクも高まりやすい傾向にあります。
20代女性|空隙歯列・上の突出を抜歯+ワイヤー矯正で改善(2年8か月・836,000円)
上下のすき間と上の前歯の突出感を気にされてご相談いただきました。
診断では右上の犬歯の先天欠損により空隙が生じ、咬合バランスにも影響を与えていました。左右差を考慮し、必要な部位を抜歯のうえ、ワイヤー矯正で前歯の突出感とすき間を丁寧に調整。
2年8か月かけて、口元全体が自然にまとまるようコントロールしました。欠損歯を含むケースでは、左右のバランス設計が治療の要になります。
⑥ 叢生・八重歯(そうせい)|歯がガタガタでうまくかみ合わない
歯が前後にズレたり重なったりしていると、そもそも歯どうしが正しい位置で接触できません。
これが叢生、いわゆる「ガタガタ」「八重歯」と呼ばれる状態です。
歯がうまくかみ合っていないと、咬合力が偏って歯の一部に負担が集中し、かみ合わせ全体のバランスも崩れてしまいます。
10代女性|叢生・出っ歯を抜歯+ワイヤー矯正で改善(3年8か月・836,000円)
前歯の突出感と歯並びのガタつきを気にされてご相談いただきました。
上下の前歯がともに前方へ傾き、叢生を伴う歯性の前突が見られる症例で、抜歯を伴うワイヤー矯正を適応しています。歯の傾斜や位置を丁寧に整え、3年8か月かけて噛み合わせと歯列のバランスを調整。笑顔が自然で、口元にすっきりとした印象が生まれました。
ただ抜歯をして並べるだけではなく、口元や笑顔の感じも踏まえると、診断の精度が鍵となります。
「まだ大丈夫」で済まないケースも。噛み合わせの放置リスク
噛み合わせの不調は、「そのうち慣れるかも」と放置されやすいものです。
けれど実際には、時間とともに自然に良くなることは、ほとんどありません。
むしろ、気づかないうちに少しずつ不調が進み、
やがて「見た目」や「機能」だけでなく、歯そのものの寿命にも関わるトラブルに発展することがあります。
以下は、実際に起こりやすいリスクの一例です。
- 一部の歯に過度な力がかかり、歯が欠けたり、揺れてきたりする
- あごの関節や周囲の筋肉に負担がかかり、慢性的な疲労感・違和感につながる
- 咀嚼効率の低下により、消化への影響が指摘されることもあります
- 見た目ではわからなくても、歯周病や虫歯が進行しやすい噛み合わせになることも
矯正現場ではよく、患者さんご本人が気づいていなかった噛み合わせの問題が、「肩こり」や「頭痛」「歯のグラつき」の背景として見つかることがあります。
また、噛み合わせは歯の寿命にも影響が極めて大きいものです。
80歳で20本以上歯を残すことを「8020(ハチマルニイマル)運動」といいますが、
下の図の通り、噛み合わせに問題のある人が80歳で20本以上歯を維持できる率は格段に低くなります。
因みに、健康な人の歯の本数は24〜28本です。
個人的には、そもそも80歳で20本という目標自体少しもの足りないと感じています…
噛み合わせの治療はどの治療法がいいの?
「マウスピース矯正とワイヤー矯正、どちらが噛み合わせに向いていますか?」
患者さんから、こうしたご相談をよくいただきます。
結論からいえば、「噛み合わせを治すには、これ一択です」と断言できる治療法は存在しません。
なぜなら、噛み合わせのズレにもさまざまなタイプがあり、その原因も歯の位置・骨格の形・生活習慣など、患者さんごとに異なるからです。
ですので、「自分の噛み合わせのタイプとゴールに合った治療法を選ぶこと」が、なによりも大切です。
ここでは、主な矯正法と噛み合わせ治療における特徴、それぞれが向いている方の傾向を解説していきます。
マウスピース矯正(インビザライン)
「軽度〜中等度の噛み合わせ調整」に強い
透明な装置を使い、目立たず、取り外しも可能な矯正法です。
近年は技術の進化によって、奥歯の移動や深い噛み合わせのコントロールにも対応できるようになってきました。
【こんな方におすすめ】
- 骨格のズレが小さい方
- 前歯〜奥歯の位置関係をミリ単位で整えたい方
- 見た目を気にせず治療したい社会人や接客業の方
- 通院頻度を抑えたい方(※Dental Monitoring との併用可)
ただし、歯根の大きな移動や骨格的ズレが大きい場合には、やや調整力が不足するケースもあります。
ワイヤー矯正
「精密な噛み合わせのコントロール」が必要なケースに
歯の表面にブラケットを装着し、ワイヤーで力をかけて動かしていく矯正法です。
歯の3次元的な移動や細かい咬合の仕上げがしやすく、噛み合わせ全体をしっかりコントロールするのに適しています。
【こんな方におすすめ】
- 出っ歯・受け口・開咬・過蓋咬合など、噛み合わせのズレが大きい方
- 骨格的な不調和がある方
- 歯根ごと歯の位置を大きく変える必要があるケース
- 外科矯正(顎の手術)との併用が必要な方
コンビネーション治療
「噛み合わせも見た目も」両立させたい方に
前半をワイヤー矯正でしっかり整え、仕上げをマウスピースで行うというハイブリッドな治療法。
重度の噛み合わせズレをしっかり整えながら、後半は目立たずに仕上げたい方にとって、有効な選択肢です。
【こんな方におすすめ】
- 出っ歯や受け口など、噛み合わせと横顔の両方を整えたい方
- 仕事やライフスタイルの都合で、治療中の見た目も配慮したい方
部分矯正
「噛み合わせ全体」を治療することはできないが、気になる部分だけ整えたい方に
前歯だけを整えるような軽度の歯列不正に対応する治療法です。
ただし、噛み合わせ全体のズレがあるケースには不向きです。
【こんな方におすすめ】
- 歯並びは比較的整っていて、1〜2本だけ気になる方
- 噛み合わせに大きな問題はないが、審美性を整えたい方
なお、広告などで見かける「短期間・格安のマウスピース矯正」は、こうした部分矯正に該当することが多く、「噛み合わせをしっかり整えたい」方にとっては不十分なケースも少なくありません。
まとめ|噛み合わせを整える治療こそ、「診断」がカギ
噛み合わせの治療は、とりわけ専門的な診断力が求められる分野です。
自分では気づきにくい歯の接触のズレや噛み癖、顎の左右差など、表には現れない“隠れた問題”が、実は多くのケースで関係しています。
そして、その小さな違和感をどこまで正確に捉えられるかが、治療のゴールを大きく左右します。
当院では、単に歯を並べるだけでなく、患者さんの「噛む・話す・笑う」といった日常の機能まで見据えた診断と治療を心がけ、見た目と噛み合わせのバランスがとれた、“一生モノの歯並び”の実現を目指しています。
「これって矯正した方がいいのかな?」
そんなふとした違和感が、将来の歯の健康を守る第一歩になるかもしれません。
無料で矯正相談実施中スマイルアクセス矯正歯科では、来院・オンラインどちらのカウンセリングも無料でご案内しています。
「こんなこと聞いて大丈夫かな?」と思うようなことも、どうぞ気兼ねなくご相談ください。
矯正にまつわる不安や疑問には、矯正医が丁寧にお答えします。
もちろん、カウンセリングを受けたからといって、すぐに治療を始める必要はありません。
ご説明を聞いた上で、じっくりご検討いただければと思います。
相談だけOK。無理な勧誘一切なし





























