こんにちは。スマイルアクセス矯正歯科の院長、吉住淳です。
「歯列矯正をしたいけど、親知らずはどうすればいい?」日々の診療の中でよく聞かれる質問です。
この「矯正と親知らずの関係」について、今回は矯正歯科医の立場から徹底的に解説します。
矯正の前に親知らずを抜くべきか、抜かなくてもいいのか。
この記事を最後まで読めば、後悔しない矯正治療のためにあなたにとって最適な選択肢は何か、そして次に何をすべきかが明確になります。
親知らずってどんな歯?【そもそも親知らずはなぜある?→進化の名残】
親知らずは「第三大臼歯」と呼ばれる、一番奥に生えてくる永久歯です。
もともとは、硬いものを噛む必要があった時代の“予備の奥歯”でした。人類の進化の名残と言えます。
昔の人は顎が大きく、歯がすり減ることも多かったため、「予備の奥歯」として親知らずが必要だったのです。
しかし現代では、食生活の変化により顎が小さくなり、親知らずが生えるスペースが足りないケースが増えています。
それにも関わらず、親知らずは10代後半〜20代前半に遅れて生えてこようとするため、
・生えるスペースが足りず、骨の中に埋まったままになる
・横向き・斜めに生えて、手前の歯を圧迫する
・うまく磨けず、虫歯や炎症のリスクになる
といったトラブルの原因になりやすいのです。
矯正治療において、この親知らずはどう扱うかの判断がとても重要になります。
最重要ポイント:「矯正のための抜歯」と「親知らずの抜歯」は目的が全く違う
ここからは矯正治療における親知らずの取り扱いにおいて最も重要なポイントをお話しします。
・矯正のための抜歯
・親知らずの抜歯
この2つ、歯を抜くという点では同じですが、目的は全く異なります。
満員ベンチにたとえて解説してみます。
矯正のための抜歯 = ベンチの“席を空ける”ため
歯並びがガタガタな状態は、「8人掛けのベンチに10人が無理やり座っている」ようなものです。
肩がぶつかり、体をねじらないと座れないため、見た目が乱れてしまいます。

この場合、どうすれば全員が綺麗に座れるでしょうか?
答えは、「2人に席を立ってもらう」ことです。 そうすれば、8人掛けのベンチに8人がゆったり座れます。

これが「矯正のための抜歯(主に小臼歯を抜くことが多い)」の考え方です。
歯を綺麗に並べるためのスペースを作ることを目的としています。
親知らずの抜歯 = ベンチに“座っていない人”にどいてもらう
では、親知らずの抜歯の場合はどうでしょうか。
先ほどのレントゲンのように埋まっている親知らずは、そもそもベンチに座っていません。
いわば、「満員ベンチの横で、つり革に捕まって立っている人」なのです。
この立っている人にどいてもらったところで、ベンチに座っている10人のスペースには何の影響もありません。
これが、埋まった親知らずを抜いても、矯正治療に使えるスペースは生まれない理由です。
よくある誤解:「親知らずを抜けば、矯正で使えるスペースができる」は間違い?
上記の通り、親知らずを抜いても、矯正で使えるスペースができることはほとんどの場合においてありません。
上のレントゲンだと確認できる親知らずですが、口の中を直接見たところ歯茎の下に埋まっており、姿は見えません。
そもそも、なぜ親知らずは埋まってしまうのか?を考えていただきたいです。
それは、「生えてくるためのスペースが、そもそも顎にないから」です。
スペースがない場所に無理やり埋まっている歯を抜いても、そこに利用可能なスペースが生まれるわけではないのです。
親知らずを抜いて、そのスペースで歯並びを治すという発想は、多くの場合、当てはまらないと理解しておきましょう。
「抜かない」という選択肢。親知らずを矯正治療に活かすケース
もう1つ重要なことをお伝えしたいです。
親知らず=絶対抜くべき悪者ではないということです。
矯正治療の計画によっては、この親知らずを残したり、積極的に活用したりするケースも存在します。
・抜かずに残すケース
・上下4本とも正常に生え、しっかり噛み合っている。
・顎の骨に十分なスペースがあり、将来的に歯並びに影響を与えるリスクが極めて低いと診断された。
・矯正治療に“使う”ケース
・手前の6番目や7番目の歯が虫歯などで抜歯になった場合に、そのスペースに親知らずを動かして(引っ張ってきて)噛み合わせを作る。
・便宜的に抜歯を行うケースで、代わりに親知らずを残して噛ませるケース(上の歯だけ/下の歯だけを抜歯するケース)
親知らずをどう扱うかは、患者様一人ひとりのお口の状態と、矯正治療のゴール設計によって変わります。
「自分は抜くべき?」と悩んだら、自己判断で抜歯する前に必ず矯正歯科医に相談することが不可欠です。
また、一般歯科の先生だけの判断だと悪気なく抜歯の判断になることも少なくないです。
矯正治療を考えている場合はなおさらご相談ください。
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【症例紹介】親知らずを活かして噛み合わせを再構築したケース
「親知らずは抜くべきもの」という印象を持たれがちですが、抜かずに活かす選択肢もあります。
以下の症例では、親知らずを活かして噛み合わせを整えたケースをご紹介します。
20代女性|先天欠損・叢生をインビザライン+抜歯で改善(1年11か月・880,000円)
下顎の第二小臼歯が先天的に欠如していたため、咬合のバランスと歯列全体の調和を考慮し、上顎右側第二小臼歯および左側第二大臼歯の抜歯を選択しました。
特に左上は、予後不良の大臼歯を抜歯することで、その後方に控えていた親知らず(第三大臼歯)を咬合に組み込む治療設計としています。
レントゲン画像をご覧いただくと、黄色の○印で囲んだ親知らずが、実際に咬合関係を構築している様子が確認できます。
親知らずを単に“抜くべき歯”と捉えるのではなく、咬合再構築の一部として“活用する”という選択肢も、矯正治療では十分に存在し得ます。
親知らずの処置については、安易な自己判断ではなく、治療全体の設計を見据えた上で矯正歯科医の診断を受けることが非常に重要です。
矯正歯科医が語る「親知らずを抜いた方がいい」3つの理由
なぜ、多くの歯科医師は親知らずの抜歯を勧めるのでしょうか。それには、放置することで起こりうる明確なリスクがあるからです。
理由1:激しい痛みを伴う「智歯周囲炎」のリスク
親知らずが斜めに生えたり、一部だけが歯茎から顔を出したりすると、歯と歯茎の間に深い溝ができます。
ここに食べかすや細菌が溜まると、歯茎が腫れて激しく痛む「智歯周囲炎(ちししゅういえん)」を引き起こします。
一度炎症が起きてしまうと、麻酔が効きづらくなり、治療時の痛みが強くなることも。
さらに、埋まったままの親知らず(埋伏智歯:まいふくちし)が原因の場合は、トラブルが慢性化しやすくなります。
このパノラマレントゲン写真の下顎にご注目ください。赤丸で囲んだ部分が「親知らず」です。
本来であれば、他の歯と同じように真上に向かって生えるはずが、完全に真横を向き、手前の第二大臼歯にぶつかっています。
このような状態では、智歯周囲炎のリスクが高くなるため矯正開始前に抜歯が勧められるケースが多いです。
理由2:隣の大切な歯を溶かす「歯根吸収」のリスク
これはレントゲンを撮らないと分からない、非常に怖いリスクです。
骨の中に埋まった親知らずが、手前の7番目の歯(第二大臼歯)の根元を圧迫し、歯の根を溶かしてしまう(歯根吸収)ことがあります。
気づかないうちに進行し、最悪の場合、健康だったはずの7番目の歯まで失うことになりかねません。
理由3:歯並び全体を乱す・後戻りの原因になるリスク
親知らずが生えてくる力は非常に強く、前方の歯を少しずつ押し続けます。
この圧力が、以下のような影響を及ぼすと考えられています。
・現在の歯並びの悪化: 前歯がガタガタになる原因の一つになります。
・矯正後の「後戻り」: せっかくきれいに並べた歯列が、後ろから押されて再び乱れてしまうリスクを高めます。
矯正治療における親知らず抜歯|順番・費用・期間の目安
では、実際に矯正治療で親知らずを抜く場合、どのような流れで進むのでしょうか。
抜歯と矯正の最適な順番
一般的な治療ステップは以下の通りです。
- カウンセリング・精密検査: レントゲンやCTで親知らずの状態、顎の骨格を確認。
- 診断と治療方針の決定: 検査結果を基に、抜歯の必要性を含めた全体の治療計画を立てます。
- 親知らずの抜歯(必要と判断された場合): 矯正治療を始める前に行うのが一般的です。
- 抜歯後の治癒期間: 抜歯した箇所の傷が癒えるのを待ちます。(目安:約1~3ヶ月)
- 矯正装置の装着: 治癒を確認後、いよいよ矯正治療がスタートします。
親知らずの抜歯にかかる費用
抜歯費用は、親知らずの生え方や抜歯の難易度によって大きく異なります。
| 生え方 | 費用目安(1本あたり) | 備考 |
|---|---|---|
| 真っ直ぐ生えている | 約1,500~5,000円 | 保険適用。比較的容易なケース。 |
| 斜め・横向き | 約3,000~8,000円 | 保険適用。歯茎の切開が必要になる場合がある。 |
| 完全に埋まっている | 約10,000~30,000円 | 保険適用。大学病院等を紹介されることも。 |
※上記はあくまで目安です。クリニックや処置内容によって変動します。
※矯正治療自体は、原則として保険適用外の自由診療となります。
結論:後悔しないために、知っておくべき3つのこと
今回の内容を、最後に3つの結論としてまとめます。
1.埋まった親知らずを抜いても、矯正の「スペース」にはならない
まず最も重要なのは、「矯正のための抜歯」と「親知らずの抜歯」は目的が全く違うということです。
歯を動かす場所を作るために席を空ける(小臼歯抜歯)のと、そもそも席に座っていない人(親知らず)に移動してもらうのとでは、意味が全く異なります
2.一方で、親知らずは「リスクの塊」であることが多い
では抜かなくていいのかと言えば、そうではありません。
矯正治療をするかどうかにかかわらず、親知らずは痛みや歯ぐきの炎症、隣の歯への悪影響、歯並びを乱す原因となるため、一般的には抜歯が推奨されるケースが多いです。
3.しかし、自己判断での抜歯はNG。矯正で“使う”可能性もある
あなたの親知らずが本当に不要な歯か、あるいは治療に活かせる歯なのか、その最終判断は全体の治療計画を立てる専門医にしかできません 。安易な自己判断は、治療の選択肢を狭めてしまう可能性もあります。
親知らずをどう扱うかは、矯正治療の成否を分ける非常に重要なポイントです。
まずは信頼できる矯正歯科医に相談し、あなたの歯並びと顎の状態に合わせた最適な治療計画を立ててもらうことから始めましょう 。
無料で矯正相談実施中スマイルアクセス矯正歯科では、来院・オンラインどちらのカウンセリングも無料でご案内しています。
「こんなこと聞いて大丈夫かな?」と思うようなことも、どうぞ気兼ねなくご相談ください。
矯正にまつわる不安や疑問には、矯正医が丁寧にお答えします。
もちろん、カウンセリングを受けたからといって、すぐに治療を始める必要はありません。
ご説明を聞いた上で、じっくりご検討いただければと思います。
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